フランクフルト中央駅で夜明かし (中編)





人気のないバスが寂しい夜道を走っていく・・・
それはまるでその後の私たちの運命を暗示しているかのようだった・・・

「ここは一体どこなんだろうね」
周りには何もなく、暗闇のなかバスはひたすらはしり続ける。
「私達ちゃんとかえれるのかなー」
少し心配したが、どうやら市電の駅についたようだ。しかしそことて人気のない 寂しい駅である。
「ホントに電車来るのかなー」
いやな予感というのは当たるもので、約1時間電車はこない。しかし それをまっていては、フランクフルトで終電をのがしてしまう。
「しかたない、タクシーに乗ろう。」
50マルクを覚悟した。乗り遅れるよりましだ。
夜遅くのタクシーもなかなか怖いのではないかとおもったが、 運転手は優しそうなおばさんだった。ドイツにきて初めて女性ドライバーに あたった。
少し安心し、フランクフルト駅までおくってもらった。終電もまだある。 万事O.K.ね!と一息ついたのだが、最後の落とし穴が私達をまちうけていた。
駅の係員に電車の時刻をたずね、暫く時間があったので、2人で
「今日は大変だったけどたのしかったねー」
などと言いつつくつろいでいた。しかし発車時刻が近づいてきても、 電車が掲示されない。来る気配もない。おかしい!
「あのー、電車は何時くるんですか?」
駅員に尋ねると、 「え、その電車は地下のホームから発車するんだよ!いそいで!」

がびーん!!!

地下にホームがあるなんてしらなかった!早くいってくれい!
私達ははしった、地下への階段を駆け降りた。然しなんと無情なことか、 電車のドアは目の前でしまってしまったのである!ホームにはやたら嬉しそうなおっちゃんが一人。
「今ので最後、もう無いよーん」
ニコニコ笑いながら去っていった。

そんな殺生な!!!

真っ青になった私達は取り敢えず上のホームへもどろうと エスカレーターにのった。そのとたんに、新浦の後ろでチャックを 開ける音がした。すぐさま気がついて、バッとリュックを前に 抱える新浦。後ろには、アラブ系のスリがいたのだ。 キッと睨みつけると、ヘラヘラわらって逃げていった。
「マジ?いきなりこれかよぉー」
緊張する新浦。
「これから朝までどうしよう?」
「ホテルに泊まる?」
しかしその案はすぐさま却下された。ホテルをさがそうと、 駅を一歩でたとたん、駅前が駅のなか以上にあぶなそうにみえたからである。
「ホテル着く前におそわれるよぉ」

ああ、私達の運命やいかに!?



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